司法書士の高橋です。
近い将来である2025年、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症の時代がやってきます。認知症になってしまった時、法律的にどのような影響があるのか、皆さんご存知でしょうか?
認知症になった場合、自分自身が行ったことがどのようになるのか判断できなくなる、法律上の言葉だと、意思能力が無い状態になるため、老人ホームなどの施設入所契約や不動産売買など、契約行為を前提とする日常の生活において、誰かがサポートにつく必要があります。そのサポートする人を「成年後見人」と言います。認知症対策として、認知症になる前に「任意後見契約」を締結していない場合、「法定後見」の手続に入るのですが、以前は成年後見人の候補者として、認知症の方の配偶者やご子息などの親族を立てれば、家庭裁判所はその親族を成年後見人として選任していました。しかし、最近、成年後見人である親族や弁護士・司法書士などの専門職の横領事件が多発するようになると(2015年最高裁統計によると、不正件数が521件、被害総額約30億円)、家庭裁判所の監督が厳しくなり、ある程度の財産がある場合(現在の東京家庭裁判所の運用では、預貯金などの流動資産が500万円以上)には、家庭裁判所は、親族ではなく専門職を成年後見人に選任したり、成年後見人を監督する「後見監督人」を選任させるようになってきました。専門職が成年後見人になったり、後見監督人が選任されたりすると、一体どうなるのか?結論としては、認知症高齢者のために、成年後見人がその方の財産を使いたくても使えなくなる、つまり、「資産が凍結する」ことになります。家庭裁判所としては、本人の利益保護を重視するため、例えば生活資金や相続対策のために自宅を売却したくても、不動産を売却する必要性と不動産売却価格の妥当性が認められないと、自宅の売却について許可は下りません。また、私が担当した案件で実際にあったのですが、認知症になる前からお孫さんにお年玉として3万円を渡していて、認知症になって成年後見人が選任されると、その3万円のお年玉は高額だという理由で、家庭裁判所からストップがかかりました。一般人からするとおかしいと思うかもしれませんが、家庭裁判所の本人利益保護に働いた結果であり、現行の成年後見制度の問題がここにあります。
認知症になっても自分の財産を自分の好きなようにに使いたい場合は、「任意後見契約」又は「家族信託契約」を、認知症になる前に、つまり、元気なうちに締結する必要があります。ご興味ある方は、事務所までお気軽にご連絡ください。