成年後見制度の限界

こんにちは。司法書士の髙橋です。

ある統計では、2025年には65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症患者になると言われています。超高齢化社会となりつつある日本では、相続対策だけではなく認知症対策も考えなくてはなりません。認知症対策として思い浮かべるのは「成年後見制度」かと思います。この制度は、認知症や精神疾患などにより判断能力が低下した人を法的に保護する制度で、現在では20万人を超える人が利用しています。ただ、私はこれまで70件以上の成年後見案件に関与してきましたが、使い勝手が悪い制度と言わざるを得ません。

例えば、不動産売却のために成年後見制度を利用した場合でも、通常、不動産売却後も本人が亡くなるまで成年後見人が付きます。その結果、毎年の家庭裁判所への報告が、本人が亡くなるまで続くこととなり、ご家族が成年後見人である場合の負担が大きくなります。また、本人の資産が多い場合は専門家が成年後見人に選任されますが、その場合、最低毎年20万円以上の報酬を専門家に支払わざるを得なくなり、結構な負担となります。そして、一番の問題が、家庭裁判所の考え方と一般人の考え方が大きく違うことです。家庭裁判所は本人の利益保護を重視するあまり、財産の無駄遣いを厳しくチェックします。相続対策のために本人の自宅を売却しようとしても、必要性が無ければ家庭裁判所は許可してくれません。一般人からすると、本人の財産を本人や家族のために使うのにどうして、ということになります。

以上のような理由から、成年後見制度に行き詰まりを感じてしまうのが現状です。これからは、認知症対策として、認知症になる前にあらかじめ信頼のおける人と契約を締結する「任意後見契約」や、成年後見制度より優れた相続の切り札として現在注目されている「家族信託」などを検討し、専門家のアドバイスを受けながら、早めに家族で話し合うことが重要になってくるでしょう。

当事務所では、任意後見契約や家族信託にも対応できる司法書士事務所ですので、お気軽にご相談ください。